5月4日 待てない子
授業中、自分のやることが早く終わってしまったら、次にやることまで静かに待っていられない。
何か楽しそうな新しく活動があったら、先生がその指示を言い終わる前に取り掛かってしまって、やるべきことを間違える。
先生がした質問の答えがわかっているとき、自分が指されるまでじっと口をつぐんでいるのが難しい。
私はそういう、「待てない子」でした。
小学4年生も終わりに近づいた三者面談で、ヤギ先生が
「かっぱちゃんは、ちゃんと待てるようになったよね。
4年生になったばかりのときは、『次なにする?次なにする?』小僧で、どうなることかと思ったけど」
と冗談めかして言っている場面が強く記憶に残っています。
親と先生の会話を横で聞きながら、私はそのとき、はっとしたのです。
――ぜんぶの先生が、私のこと「なんでもできる子」って思ってるわけじゃないみたい。
そのときになって、初めて気づきました。
――かっぱ、じっと待ったり我慢するの、あんまり得意じゃないかもしれない。
なんだか、かっぱは、なんでもできる子じゃないみたい。
ヤギ先生の指摘で自覚してからは、ある程度意識的に、「待つ」ということに気を付けられるようになりました。今回は省くけれど、ヤギ先生にはほんとうに多くのことを教わりました。
そのおかげもあって、私は中学に入る頃には、自分のやるべきことが終わった後や、何か面白そうな活動があっても、大人しく待っていられるようになりました。
厳密には、ノートの端に絵を描いたり、頭の中でお話を考えたり…見かけ上は、大人しく座っていられるようになりました。
とはいえ、授業中、友達の発言に対して言いたいことが暴走してしまって、先生にたしなめられることは、まだときどきありました。
「人の気持ちを考えて、話そう」
何度か中一のときの担任の先生には諭されました。
――私だって、ちゃんと相手の気持ちを考えているのに。考えてからきちんと喋ってるのに。
当時はそう不満に思ったけれど、今ならもうちょっとわかります。
ちゃんと、相手の気持ちは考えてはいたのです。考えたうえでそれでも言いたいことがどんどん出てきて、相手の言葉を聞こうとせずに、次々と主張を繰り出してしまう。結果的に、一方的に責め立てる形になってしまっていたんだろうなと思います。
結局はそれも、相手の次の言葉を「待てない」というところ、自分の「いま、この瞬間に言いたい」という衝動を抑えられないところから来ていたのかもしれません。
「いま、この瞬間に言いたい」という滾るような衝動は誰しもあるものだと思います。
私の場合、その衝動が成人した今になっても熱く強く残りすぎているんじゃないかと思うのです。だから、待てない。
今でも、授業中に教授の説明や発言に違和感があると、つい手を挙げてしまいます。それをがんばってこらえられるときでも、「私、言いたいことがあるんですけど」という目をせずにはいられません。
結果として、一刻も早く授業を終わらせたいという周りの空気を読まずに、質問を繰り返してしまうことになります。申し訳ない。
我慢できるときも、ちゃんとあるのです。もう大人になったから。
でも、その場で言いたいことをぐっとお腹の底でこらえるときは、すごく気持ちが悪いです。体がかあっと熱くなって、息が荒くなります。まるでひどく怒っているときのように、汗まで出てくることがあります。深呼吸してなんとか落ち着けるのに時間がかかります。
他の人の順番を待つときは、他のところに意識を向けないといけません。一生懸命スマホを見るとか、本を読むとか。じゃないと、うずうずやきもき、じっとしていられないのです。早く早く、私のほうがさっさとできるのに、と思ってしまう。暇をつぶすのが苦手なこととあいまって(4月30日 からっぽの時間の使い方)、電車待ちは地味にストレスです。
そのへんのこと、診断がもらえてよかったんです。ほんとうに。
でしゃばりな子、
我慢をしらない待てない子、
自分の言いたいことを言わずにはいられないわがままな子、
そういうふうに自分のことでちょっときらいだった部分がね。
「特性だから、そう感じちゃうのはしょうがないことなんだよ。
むしろ、ちゃんと上手いことやってく方法を身につけてて、すごくえらいよ」
って考えられるようになったのは、とても大きな変化だと思うのです。
追記
他のADHD当事者の方(注意欠陥が強いタイプで、全体的に私より程度が重め)のブログを読んでいたら、似たようなことが出てきたのでメモ。
気になったことは今すぐ質問したい!
思いついたこと、思い出したことは今すぐやりたい!
やりたいことは今すぐやりたいのです!
出来なければ自分でもどうしようもないくらいそわそわして落ち着いていられない。
そしてこの感覚は誰にもわかってもらえなくて、自分でもどうすればいいのか分からなくて学校でも家でも「わがまま言わないの!」「いい加減にしろ!」「そんなことばかりいうならもう知らない!」とただただ叱られるばかりでした。
やっぱり、他のADHDの人もあるんだそういうの…