かっぱちゃんの耳

感覚過敏やらADHDの診断をもらった大学生が、特別支援学級の先生になりました。

9月16日 紙芝居

自分の経験をもとに、発達障害についてお話しする紙芝居を作りました。

 

 

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小学3年生のかっぱちゃんは、元気いっぱいの女の子。

好きな食べ物は、モモと、とんじると、ハヤシライス。

そんなかっぱちゃん、自分のことを「すごい子だ!」と思っていました。

 

 

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だって、学校のテストはよくできるし、発表もたくさんするし、絵や工作も大の得意だし、ピアノは学年でいちばん上手だし。

でも、4年生になってしばらくすると、友達に「へんだよ!」と言われることがふえてきました。

「なんだかわたし、みんなとちょっと違うみたい」

 

 

 

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しずかに先生の話を聞く時間。

机でごそごそ、いすをぐらぐら。

ひとりだけ、ずっと動いているかっぱちゃん。

クラスで目立って、またしかられてしまいました。

集中力がないのはわかっているけれど、自分でうまく止められない。

どうしてみんな、ずーっとじっとしていられるの?

 

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友達とのおしゃべり。

ふと、かっぱちゃんは不思議に思ったことを友達にたずねてみました。

「ねえねえ、なんでそんなに太っているの?」

みんなが急にしずまりかえっても、かっぱちゃんは気づきません。

「かっぱちゃん、ひどいよ。もうあそばない」

と言われてやっと、おしゃべりをとめました。

うーん、空気を読むってむずかしいな。

すなおに聞いただけなのに、なんでみんなおこっているんだろう?

 

 

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社会科見学で町へおでかけ。

駅、大通り、ショッピングモール。

こうずいみたいに流れこむ、音と光。

頭がいっぱいいっぱいで、苦しくなってしまいました。

どうしてほかのみんなは、へいきなの?

 

 

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「かっぱちゃん、へんだよ!」

「こまった子だね」

そう言われるけれど。

ほんとうは、かっぱちゃんがいちばんこまっているのでした。

 

 

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かっぱちゃんには、まわりのみんなと少しちがう、苦手がありました。

だれにだって、得意と苦手はあります。

でも、かっぱちゃんの苦手は、あんまりあんまり大きくて、ときどき道具やほかの人の手伝いがいることもあるのです。

そんな苦手をもっていても、外から見てもわかりません。気づかれません。

ただただ、「あの子、へんだよ」と思われるだけなのでした。

 

かっぱちゃんだけではありません。

こうした苦手でひっそりこまっている人は、あちこちにいます。

あなたの近くにも。おとなにも、子どもにも。

そのことをまず、知ってほしいのです。

 

「へんだよ!」

そんなふうに、言わないで。

もしかしたらその友達、こまっているのかもしれません。

おしまい。

 

子どもの質問に答える準備

「それって、『発達障害』ですか?」

はい、『発達障害』と呼ばれています。

得意と不得意のでこぼこが、大きすぎる人のことです。

紙芝居のなかで紹介したようなことで困っている人でも発達障害ではない人がいるし、発達障害であって別のことで困っている人もいます。なので、どんな特徴をもっているかは、人によって大きく違います。

 

「今でもこういうことで困っていますか?」

先生は、大人になって、困ることがだいぶ減りました。

人を傷つけない言葉の使い方や、うるさい場所での乗り切り方などが少しずつわかってきたからです。でもやっぱり、ほかの人よりも、じっとしていられなかったり、言葉の使い方を間違えたりするときがあります。

 

「そういう人に出会ったら、どんなふうに手助けしたらいいですか」

じゃあ、2週間前に、先生とみんな出会ったよね。どんなふうに手助けしたいと思う?

そう、基本的には、必要ありません。今すぐに、こんなふうに助けてあげてほしいとか、声をかけてほしいとかいうことはないです。

ただ、人よりも得意と不得意のでこぼこが大きすぎるだけの、みんなと同じ人です。

特別な目で見ないでほしいです。

だけど、もし、これから先みんなが「あれ、この人なんか空気読めずに変なことしてるなあ」とか、「こいつ、ほんとにこれが苦手だなあ」っていう人と出会ったときに、「もしかしたら、何か理由があるのかもしれない」と考えられる人になってほしいのです。

その理由は、先生と同じかもしれないし、違うかもしれない。でも、「なにか事情があるのかもな」って、思えるやさしい人になってください。