1月28日 妹に謝れない
地元の大学の教育学部に通う妹から、こんなラインがきました。
頼ってもらえて、うれしい姉。
それに授業のレポートのためとはいえ、発達障害について本を読もうという気持ちになってくれて、とってもうれしい。
そんな妹、最近ひょんなきっかけから、幼い頃に私から受けていた仕打ちを詳しく思い出したらしいのです。
母から伝え聞いたのは、かつて私が妹にしていた陰湿ないじめの数々。
「おかげで、私はいじめをしない子に育ったけどね!」と妹は笑いながら母に語ったそうです。
私も、自分のしたことは覚えています。
公園で妹の頬っぺたに噛みついた。
いとこと遊んでいるときに妹だけ仲間外れにした。
妹の財布を盗んで隠した。
やり返されて腹が立って、妹が泣くまで蹴った。
他にもたくさん。
きっと本人ほどではないのだろうけど、細かく、覚えています。
やった行為もそうだし、そのときの心情も、生々しく記憶に残っています。
足が速くて、手先が器用で、よく気が利いて、何をやっても私より上手くできる妹。そのくせ、なんでも私の真似をする。習い事も私より後から始めたくせに、どんどんうまくなる。
おばあちゃんにもお母さんにも知らないおばさんにも妹ばかり褒められる。喧嘩をしても怒られるのは私だけ。
憎くて憎くて仕方なかった。いなければいいと思っていた。
毎週末遊ぶ、年下のいとこたちは可愛くてしかたないのに、なんで自分にはこの子たちじゃなくてこんなに嫌な子がきょうだいとしているんだろうって。
こいつさえ、この家からいくなればいいのに。
思い出すと、涙が出てきます。
なんであんなことしてたんだろう。なんで私はそれでなんとも感じていなかったんだろう。
だから普段は、思い返さないことにしています。
でも、妹はもっとずっとつらかっただろうし、もしかしたら今もつらいのかもしれません。
今、妹とは、とってもいい関係だと思います。
たぶん、そう思っているのは私だけじゃないはず。
帰省するたび、妹は「一緒の部屋で寝よう!」と言ってくれて、ふたりで布団を並べて1時間近くしゃべってから眠ります。妹がふざけて私の布団にもぐりこんでくることもあります。
ふたりで遊びに出掛けることもあるし、家では一緒に歌ったり踊ったりします。
仲良く、なったんです。
すごく仲良くやっているんです。
だからなおさら、あやまることができません。
今、とってもしあわせだから、もう汚い過去なんて見たくない。妹に何も思い出してほしくない。何よりきっと、醜い自分の姿を振り返りたくない。
ごめん、って、とっても思っています。
思ってるだけで、それを口に出すことができないんです。
ごめん、ごめん、何度言っても足りないけど、ほんとうにごめん。
いちども話に出したことはないけど、私、ちゃんと覚えてる。あなたにどれだけひどいことをしてきたか。
ほんとうにごめん、ほんとうにごめん。
仲良くなった今になっても言わないのは、何もなかったことにしたいわけじゃないんだ。ただ、なんて言ったらいいのかわかんないんだ。ごめんじゃ済まされないことがわかってるから。
いいかげん、謝らなくちゃいけないよね。ほんとは直接。
無理だとわかっているのに、「おねがい、忘れて!」って思いながら、楽しい思い出で上書きしようとがんばってしまう。
ごめんね。ほんとにごめんね。
私がそういうのに不器用なこと、知ってるでしょ。ママに怒られても意地でも「ごめんなさい」を言わないで言い訳ばっかりしてたの覚えてるでしょ。
たぶん、その癖がまだなおってないんだ。
もうちょっとだけ待っててほしい。
次に帰ったら、ちゃんと準備して、きちんと自分の口で謝るから。
記憶の中の幼い妹がいつも泣き腫らした目をしているのは、ぜんぶ私のせいなのです。