かっぱちゃんの耳

感覚過敏やらADHDの診断をもらった大学生が、特別支援学級の先生になりました。

12月22日 かっぱちゃんは気づかない<発達障害といじめ>

かっぱちゃんは気づかない1(小6編)

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数日後、学級会が開かれました。

どうして仲の良い友達に助けを求めなかったのか、という質問がシカちゃんに浴びせられました。

そのときのことは、よく覚えています。

シカちゃんは、私の目をまっすぐ見て、こう言いました。

「わたし、かっぱちゃんに、たすけてって言ったよ。でも、しっかり聞いてもらえなかった。」

 

私はその瞬間になってようやく気付きました。

私が本に夢中になりながら、シカちゃんのことばを受け流したあのときだ、と。

シカちゃんは私に助けを求めていたのに、私はその手を振り払うようなことをしてしまったのです。

 

あとからいくら謝っても、シカちゃんが私のことを許してくれないのは当然でした。

 

 

かっぱちゃんは気づかない2(小1編)

思い返せば、小学校1年生のときにも似たようなことがありました。

 

そのときはクラス単位ではなく、登校班のなかで起きているいじめでした。

のちに6年生で「女王様」となるふたりと同じ町内に住んでいた私は、毎日一緒に学校に行かなければなりませんでした。

5人いる登校班のなかで、ひとりだけ口をきいてもらえないのは当たり前。「カマキリを食え」とブロック塀の前に頭を抑えつけられたこともあったし、交通量の多い国道を「渡らないと殺す」と脅されたこともありました。

でも、お母さんにも先生にも報告はしませんでした。嫌には嫌だったけれど、そこまで辛いわけではなかったからです。

ひとたび小学校に着いてしまえば他の友達がたくさんいて楽しいから、「登校の間だけだし」と思っていました。

なんというか、小学校はそういうところだと思っていたのです。多少の嫌なことがあるのは当たり前、でも他に楽しいことがたくさんある、みたいな。

 

そのうち、いじめは激化して(当時の私はとくに気づいていなかったのですが)、新品だった私のランドセルには、大きなバツ印の傷がつけられました。

クラスメイトの男の子とその親が家に謝りに来て、「なんでわざわざうちまで来たんだろう?」と思ったのを覚えています。

そのあたりから先生が認知したのか、「つよい女の子たち」が私に直接嫌なことをしてくることはなくなりました。

 

代わりに、私は他の子へのいじめを手伝うようになりました。

唯一鮮明に覚えているのは、新幹線高架下にある薄暗い公園で、なわとびを使ってある男の子をブランコの支柱にしばりつけたこと。

「きつくしばって」とある女の子に言われて、どうやったらほどけないか考えながら、彼の足にぐるぐるとなわとびを巻きました。

 

当時の私は、「かっぱはケライだから、言うことを聞いてあたりまえ」と思っていて、自分のしていることを良いとも悪いとも感じていませんでした。ただ命令されるがまま、動いていました。新しい遊びのルールを教えてもらって、それを実践しながら覚えているのと同じ感覚でした。

 

たしかそのときは、何気ない大人との会話のなかで私がこの出来事について話をして、事が発覚したのだったと思います。

もちろん、女の子たちからは「何言いつけてんの!」と怒られたけど、私にはその怒られる理由もピンときていませんでした。

できごとを気まぐれに親や先生にお話しするのは日課なのに、そのうち何が話していいことで、何が話してはだめなことなのか、区別がよくわからなかったのです。

 

 

 

どうして気づかない? 

発達障害をもつ子どもは、いじめの被害者・加害者になりやすいとよく言われます。

どうしたら防げるのか、私の視点から考えてみることにしました。

ADHDの診断とASDの傾向をもつ私の場合の、「こんなことに気づきにくい」という例を書き出してみます。

 

<仲間から嫌われるようなこと>

 アスペルガー症候群の特性のある女の子の場合は、さまざまな暗黙の了解が理解できずに、仲間はずれにされたり、イジメにあってしまうこともあります。

 また、ADHDの女の子の場合は、ルールは理解していても不用意な発言や自分勝手な発言をしてグループ内で嫌われてしまうこともあります。

どちらのケースでも、特性のある女の子にとっては、なぜ自分が嫌われているのか理解できない場合が多いようです。

 

――「ASDADHD、LD 女性の発達障害」宮尾益知 河出書房新社

  • 場の雰囲気を読み取るのが苦手+メタ認知が苦手
    →自分がしたい話を唐突に始めてしまっていること、自分が思ったことをすぐに口に出してしまっていることを自覚しづらい

  •  「常識」を学ぶのが苦手+場の雰囲気を読み取るのが苦手
    →「グループ内でのルール」・「グループ内での”カースト”(上下関係)」ルールの中身、あるいはルールやカーストの存在そのものに気づきにくい

  • 人の表情や場の雰囲気を読み取るのが苦手
    →相手が気分を害した表情をしていること、場が凍ったり冷めたりしていることを察知しづらい

 

<いじめられているということ>
  • 人の表情や場の雰囲気を読み取るのが苦手
    →自分が無視・シカトされていることに気づきにくい
     (あからさまになればさすがに気づける)

  • 皮肉や嫌味を言われても語義通りに受けとる
    →相手の悪意に気づきにくい

  • 「常識」を学ぶのが苦手
    →「常識的に考えて、さすがにそれはおかしい」とならず、いやがらせをなどを受けても、「なんか嫌だけど、これはそういうものか」と納得してしまう
    →先生や親への報告が遅れる

 

<人をいじめているということ>
  • 人の表情や場の雰囲気を読み取るのが苦手
    →「相手が嫌がっている、悲しんでいる」ということに気づきにくい
     (「やめて」などと明示的に言われればすぐやめる)

  • 「常識」を学ぶのが苦手
    →善悪の判断の発達が遅れがち
    →「悪いこと」と思わずにやってしまう

 

こういった要因があると思います。

じゃあ具体的にどうすれば本人や周りの子たちのいじめを防ぎ、早期発見できるのかということについては、また次回考えたいと思います。

 

 

おまけ

ちなみに、なぜ急にこんな重い話題が出てきたのかというと。

大学の授業で、いじめについてのロールプレイ(演劇)をやることになりました。

さまざまな学科から集まって6人班が作られ、自分たちで台本を書いて、それを100名程度のクラスの前で発表します。

その班のなかで、私、どうにもうまくやれていないのです。もしここが中学校だったら、明日から私の居場所なくなってるだろうな、ってぐらい…

それで、考えました。

どうして、私はちゃんと気づけないんだろう。

どうして、いつも浮いちゃうんだろう。(まあ、自分が浮いてるって気づけるようになったのも高校入ってからなんですけどね!)

答えが出るかはわからないけど、考える。かつて私がいじめたも同然のシカちゃんや、ブランコに縛り付けたあの男の子への謝罪と反省の気持ちもこめて、考える。考える。