12月17日 うるさい放送としずかなパニック
ギチギチきしむ古いキーボードが頭に直接取りつけられて、そのキーをひとつひとつ強く押しつけられているような感覚。
同時に、耳の端をバイオリンの弦の代わりにされて、キィーコキィーコ弓でひかれている。
大学の図書館の閉館を知らせる放送が、大音量であることは知っていました。
だからいつもその時刻までには家に帰るようにしていたのですが、昨日はうっかりしてしまったのです。
バイオリンのメロディーが流れはじめ、「あっ、まずい」と思いました。イヤーマフは持ってきていない日でした。
それで余計に焦ってしまって、あっというまに苦しくなる頭のなか。
パニックの一歩手前、黄色信号です。
あたふたしていた私を、たまたま近くにいたしーちゃんが家に送り届けてくれました。
そんなふうになって寝落ちた日の次の朝は、とってもかなしい気持ちになります。
―――あーあ、最近、調子よかったのにな。またやっちゃったな。人に迷惑かけちゃったな。
―――次は、人がたくさんいる前で大きなパニックになったらどうしよう。
自分が情けなくて、どうしてそうなるのかわからなくて不安で、先のことが心配で、ぜんぶまとめてかなしい気持ち。
前、いちど「一人でできるようになってきた!もうだいじょうぶ!」ってなったからこそ、また失敗してしまって今度はどうすればいいのかわからないのです。
最近、自分の特性や体質で困ったことが起きたとき、ひとりで対処できることが増えました。
だから今日も、「どうしよう」ってとりあえずしーちゃんに電話するのではなくて、自分でなんとか落ち着くことができました。
自分のことを客観的に見ることやメタ認知は苦手分野です。
だから最近は、自分がもし先生で、目の前で同じように子どもが困っていたらどうするかを考えることにしています。
「先生、わたしね、またパニックになっちゃったの。ほかの人に見られてはずかしい。がんばってるのに、またなった」
しょんぼりしてそう言う子がやってきたら、私には何ができるでしょうか。なんて言葉をかけられるでしょうか。
「一生懸命ならないように、なっても自分でなんとかできるようにって練習してたもんね。パニックになってつらかったね。なってるときもそうだし、そのあともかなしいよね。
でも、今回は大きなパニックにならなかったじゃん。前よりもできるようになったこと、いっぱいあるよ。
だって、深呼吸したから泣かなかったし、「んんんーーーっ」って声も出さなかったし、何も考えないでダッシュすることもなかったし、ゆっくり息をはいたから過呼吸も起こさなかったね。
ちゃんと、自分で対処できるようになってきてるよ。だいじょうぶ。
すごくえらかったよ。がんばったよ。」
そう言ってあげられるんじゃないかなと思うのです、今なら。