かっぱちゃんの耳

感覚過敏やらADHDの診断をもらった大学生が、特別支援学級の先生になりました。

1月18日 完璧なお父さん

平日は、父上と東京近郊でふたりぐらし。

毎週金曜日にふたりで車に乗って、母と妹が待つ地元に帰り、そこで週末を過ごして日曜の夜にまた戻るという生活をしています。

そういう、平和な生活です。

 

今日は金曜日なので、夜に仕事帰りの父と待ち合わせて、実家に帰る日でした。

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こうしてこの週末2日間、洗われていない洗濯物が、ていねいに干されていることになったのでした。

 

 

 

お父さんは、完璧です。

私が小さい頃からずっと。

 

朝早くから夜遅くまで仕事をしてて、英語バリバリでメールを打ってて、かっこいい。あと、娘が言うのもなんだけど、けっこうイケメン。

週末に家に帰ってくると、「なんでこんな汚いんだ!」って吠えながらだけど家じゅうを掃除して、早起きしてお風呂を洗って、洗濯をして、せっせと車を磨く。

平日の仕事で疲れてるだろうに、小さい頃は毎週あちこちの公園や遊び場に連れて行ってくれた。昔は壊れたおもちゃやオルゴール、今は変になったスマホの充電器やパソコンを直してくれる。

勉強しろとか、いい成績を取れって言わない。恋愛や友達関係に口を出さない。でも、「やりたいことをやりな」って私が選んだ習い事や部活を応援してくれる。

 

お父さんは、綺麗好きで、理性的なしっかり者で、完璧なのです。

 

だから、お父さんに似ていると言われると、すごくうれしかった。

 

保育園の頃、「かっぱは、ブロック遊びは全部のブロックを使わないと気が済まないんだな。父さんそっくりだな」と言われました。

小学校の学習発表会の準備のときは、「お、資料とか発表の準備とか、始めると手が抜けない完璧主義なところ一緒だな。それに、父さんもいつも支援級の子を面倒見る係だったよ」と言われました。そのときはあんまりうれしくて、先生にも報告しました。

 

お父さんが、「父さん似だな」って言ってくれたときのことを、いくつもいくつも覚えています。

だって、誇らしいこと、うれしいことだから。私にとっては、お父さんからのいちばんの誉め言葉なんです。

 

 

 

一度も誰からも、そんなふうに言われたことはないけど。

 

お父さんが言うことは、ほとんどいつも、正しい。

私やお母さんが叱られているときは、私やお母さんが何かヘマをしているとき。そこに言い返すのは、「屁理屈」とか「言い訳」。

お父さんに指摘されたら、そこは欠点だから、直す。

だって、お父さんは完璧だから。

 

そう思ってきました。

もちろん人間だから、ときどき怒りっぽくなったり、うっかりミスしたりすることはあるけど、一家のなかでいちばん完璧に近い、「正しい」人なんだって。

 

 

 

いつの頃からか、お父さんに些細なことを指摘されるたび、お父さんの言っている言葉が上手く頭に入らないようになっていました。

 

使ったペンを戻してない。トイレのスリッパを揃えていない。コートを掛ける向きが違う。枕がベッドから落ちてる。

「かっぱ!ちょっと来てみろー」と呼ばれると、頭はもう「あ、あ、いま私、怒られる、怒られる」って、そればかりのモードになってしまいます。口が勝手に「あーうっかりー。ごめ~ん」とか「はーいはい、すみませーん」って動いてる。言い訳と屁理屈になるから、他は言わない。

 

お父さん、べつに声を荒げているわけではないのです。イラッとしてたり、大きめの声で呼んでたりはするけど、怒っているわけではないはずなのです。

でも、私のなかではどうやらそれが、「怒ってる」に変換されているみたい。

 

 

そのことに、今日、気づきました。

 

お父さんとの話し合いがなんだか苦手な理由も、そこにあるのかもしれません。

進路のことでも、自動車学校のことでも、お父さんにひとこと「それは違うだろ」と言われると、もうそれ以上私からは言えなくなってしまうのです。

お父さんはただ自分の意見を言っているだけだとわかっていても、私の頭には「正しい答え」として入力されちゃうのかもしれない。実際、すごく論理的で、正論だと思うし。

 

「それ、話し合いじゃないよね。かっぱちゃんが何か言って、それに対してお父さんが言って、かっぱちゃんがそれを受け入れてるだけになってるよね」
って、いつだかタケノコ先生言ってたっけ。

そのときは、「そんなことない。対等に話し合ってるけど、お父さんのほうがいつも正論を言うだけ」って思って、どうしてタケノコ先生がそんなふうに言うのか、よくわかんなかったけど。

帰りの車で卒業後の進路について父と話した今日になって、ちょっとわかった気がします。

途中から私は言うことがなくなって、ただ父に見えないように外の窓を向きながら、ぽろぽろ涙が出てくるのでした。

 

 

「怒られる」

「正論で返される」

ほんとうはそうじゃないかもしれないのに、私の頭はそう認識して、何も言えなくなる。思考が回らなくなる。

 

 

 

私ね、お父さんのこと、だいすきなのです。

優しくて、なんでも完璧なお父さん。

私のことを大切にしてくれるし、私もお父さんがだいすき。

 

なのに、なのに、って、ときどき考えてた。

なんで、ふたりで喋る場面になると、息が苦しくなるんだろう。

なんで、お父さんが待ってる家に、帰りたくないんだろう。

 

 

 

正しいかはわからないけど、今日は、その理由のちょこっとが、わかった気がする。