10月14日 妹とイヤーマフ
先日、妹とふたりで東京ディズニーシーに行ってきました。
とってもとってもとっても楽しかった!!
こんどはお母さんも一緒に3人で来ようね、と約束しました。
そのときに、ちょっと思うことがあったのでメモ。
着いて最初に向かったのは、人魚の国。
貝殻と泡と色とりどりの魚たちが舞いおどる幻想的なエリアで、ショーを見ることにしました。
小さな子どもも見るとはいえ、かなりの音量が予測されます。
私がリュックからイヤーマフを取り出すと、妹の顔がこわばったのがわかりました。
妹はひとこと、
「え、まじで・・・」
とうんざりしたようにつぶやきました。
私は、
「うるさいからねー、しょうがないしょうがない」
と笑って、そのままショーを見ることにしたけれど。
正直、隣の妹がどんな表情をしているのかが怖くて、正面で踊る人魚姫から目を離すことができませんでした。
お姉ちゃんより、よく空気が読める妹。
お姉ちゃんより、ずっと友達も多いし、周りの人にも気が遣える、私の自慢の妹。
私がいつもの恰好で出かけようとすると、「恥ずかしい!近くにいたくない!」とぷりぷり怒るおしゃれな妹。
だからこそ、急にでっかい黒いモノを取り出して頭につけて、悪目立ちする姉の隣に居ることが、ちょっと嫌だったんだろうなと思います。そういえば、家族の前でイヤーマフをつけたことはなかったし。
「今までいつも耳栓だったじゃん。耳栓じゃだめなの?」
と聞くので、
「それだと不十分なときもあるんだよー」
と返しました。
「ふうん」
と納得したようなしていないような顔。
素直にそういう表情をしてくれるところは、少し安心しました。
その後の別のショーやアトラクションでは、イヤーマフをつけずにぎゅっと我慢することにしました。
ショーを彩る軽快な音楽、キャラクターたちの声、迫力満点の効果音。
大きな手のひらが私の耳にぴったりくっついて、みしみしと押しつぶそうとしているみたいでした。
それでも、はじけるような笑顔でキャラクターに手を振る妹の視界に、目障りな異物を入れたくなかったのです。
やがて、日が落ちました。
薄暗い通路で絶叫系アトラクションの順番待ちをしていたとき、妹がぼそっと言いました。
「最近ね、大学でね、子どもの発達とか、発達障害についての授業が始まったんだよ」
そうなんだ、と相槌を打ったけれど、とくに話の続きはないようでした。
少しの沈黙。
それから妹が、またぼそっと付け足しました。
「ねえ、耳のやつってつけるとどんなかんじ?」
「試してみる?」
私はイヤーマフを取り出して、妹の頭にがぽっとつけました。
わーすごい、と妹は目を丸くしました。
「ぜんぜん聞こえないね。人がいないかんじがするから、あたしは逆に不安だわー・・・すごいね、これ。便利だね」
妹は感心したように言って、イヤーマフを私に返しました。
さっきはごめんね。べつに、がまんしなくてもいいよ。つければいいじゃん。
妹は、ほんとうはそう言いたいんじゃないかなって思って。
私は、ショップで奮発して、フード付きのパーカーを買いました。前々から好きだったキャラクターのもっふもふのパーカー。これからの季節に室内着としても使えるし。
その後の夜の時間は、遠慮せずにイヤーマフをつけてディズニーの世界を楽しみました。
大人になってから、苦手な場面が顕著になったこと。
今までできていたのに、できないことが増えたこと。
発達障害と診断されたこと。
家族にどう思われているのかは、あいかわらず、気になります。
「『困る』ってどの程度なわけ?気のせいなんじゃない?がまんできるんじゃない?」
もう表立って言われることはないけれど、心のどこかでそう思われているんじゃないかって怖くて。
母、父、とくに、妹から、自分がどんなふうに見えているのかは、気になりはするけれど、考えることを避けていました。
でも、最近、家族と過ごしていて「あ、受け入れられてるな」と感じる場面があります。今回のディズニーでのできごともそのひとつです。
私は鈍感だし、家族たちも不器用なんです。
だから、ぜんぶは伝わりきっていないだけで、もしかしたら、意外と私の特性も、まるごと家族に受け入れられつつあるのかもしれません。
私は、もう少し安心してもいいのかもしれない。