かっぱちゃんの耳

感覚過敏やらADHDの診断をもらった大学生が、特別支援学級の先生になりました。

1月25日 みつかっちゃった

f:id:yukana777:20190130230257j:plain

f:id:yukana777:20190130230259j:plain

f:id:yukana777:20190130230303j:plain

f:id:yukana777:20190130230307j:plain

今日。

f:id:yukana777:20190130230745j:plain

f:id:yukana777:20190130230749j:plain

 

 

こんなとこ見られたくなかったのに、見つかりたくなかったのに。

私は、パニックを起こして、階段の隅にうずくまったまま動けなくなっているところを、クラスメイトの何人かに、見つかってしまったのでした。

仲良しのふたりが、私のことを心配そうにのぞき込んでいました。

 

ふたりがたくさん言っているけど、あんまりわからない。何か質問してるみたいだけど、わかんない。ちゃんとしゃべれない。

「あのね、どっか逃げようと思ったんだけど、どうやったら外に出れるのか、知ってるところに行けるのか、場所がわかんなくなっちゃったんだ」
って、ぼんやりゴワゴワ、頭の中で伝えたいことはあるんです。

なのに、うまく言葉にならないんです。みっともなく涙がぽろぽろ出るばっかりで。

こんなとこ、こんなとこ、絶対に友達には見られたくなかったのに。


 

でもそれより、どうすればいいんだっけ。ここから逃げないといけない。

何度も考えて考えて、一生懸命考えて、落書きノートを出しました。

f:id:yukana777:20190130231935j:plain

だって他に、安全な場所、知らないから。

ふたり、ネコちゃんと、もともと支援室に関わりのあったウサちゃんが、私を連れて行ってくれることになったようでした。

ここどこだろう、今どこだろう、って講義棟の中を歩きながら、私はずっと、ふたりに謝っていたような気がします。

 

 

支援室では、タケノコ先生が穏やかに話を聞いてくれました。まだやっぱり音は上手く入ってこなくて、筆談でした。

f:id:yukana777:20190130231139j:plain
f:id:yukana777:20190130232932j:plain

音楽の授業だったこと。

グループごとの期末発表のための準備の時間になり、私たち英語科の8人グループは、別の小さな練習室に移って、合唱練習をしたこと。

「ここ、反響がうるさいね」って友達が言っていて、我慢しているのは私だけじゃないんだなと思ったこと。それでも友達たちは私を気遣って、寒いのに窓を開けたり、まだ反響がましそうな部屋の真ん中の場所を代わってくれたこと。

ピアノの音もみんなの声も、混ざって混ざって、ぎりぎり、キリで頭に穴を開けようとしているみたいだったこと。ピアノはいちばん上手な子が弾いてくれているのに、合唱のハーモニーも綺麗なはずなのに、辛くて辛くて自分でも不思議で、どうしようもなかったこと。


私は一度歌ってから耳栓を取りに元の教室に戻って、それからもう一度歌を通すことになった。けど、耳栓をしながら歌うと自分の声が響くから、結局2回目はほとんど声を出せなかったこと。

2回目の途中から「今はダメだモード」のハチマキが頭に食い込むようにしんどくて、とにかくどこでもいいから逃げたくて逃げたくて、でも逃げる先がわかんなくて、じっと立っているしかなかったこと。

歌うのが終わって、ちゃんと、「ちょっと外に出てるね」って言って、走るみたいに部屋を出たこと。

でも、出たけど、外じゃなかった。そこはそこでうるさくて、知らない風景で、知らない人がいっぱい知らないことをしゃべってるばっかりのところ。どっちに行ったら息ができるところなのか、静かなところなのかわからなくて、ここがどこなのかわからなくて、とにかく苦しいから座りたくて、

そのうちに、ふたりに見つけてもらったこと。

なのに、ふたりの言っていることがわからなかったこと。

 

タケノコ先生に伝えたいことはいっぱいあったけど、どれくらい伝わったのかはわかりません。

 

筆談も、たいへんだった。

小さなノートにしっちゃかめっちゃかな順番で書いていってしまったので、順を追うので精一杯。

f:id:yukana777:20190131002602j:plain

後から見ても、なんだかよくわかりません。

ホケカンで休もうと言う先生と、嫌がる私の嚙み合わない攻防?

f:id:yukana777:20190131002607j:plain

ホケカンは、細いガラスの窓口の奥にいっぱい人が見えて、白衣の知らない人もいて、とにかく理由はなくきらいなのです。

 

次回からは、上から順番に書くとか、見開きページで十分にスペースをもつとか、こんがらがってる頭でも流れを追いやすい工夫したいと思います。

 

 

なんだかよくわからないけど、結局、ホケカンに向かうことになったみたいでした。

その道中、しーちゃん(ウサちゃんが連絡を入れてくれたらしいです)から「かっぱちゃんの希望によっては、ホケカンより学内カフェの方が落ち着くかもしれない」というLINEが来たそうで。

私はもちろんカフェが好き。

タケノコ先生と友達二人との4人部隊で、大学内のカフェに入りました。

 

 

だんだん、だんだん、お鍋の湯気に当たったメガネの曇りがだんだん取れていくみたいに、頭のなかがはっきりしてきます。

考えようと思えば考えられるし、思ったことを口に出せる。目の前の友達が口を動かしていれば、そのとおりに声が意味になって頭に入ってくる。

だんだん、だんだん。

本体が熱くなってフリーズしていたパソコンが少しずつ冷めていくんです。

いろんなことを、考えられるようになってしまうんです。

 

私、たぶんさっき、音楽講義棟の階段で、泣いてた。

たぶん過呼吸も起こして、ちびっこみたいにひくひく泣いてたんだった。

 

それで、友達たちに、それを見つかってしまったんだった。

近くにいた他の学生も、見てたのかもしれない。直接は目にしなかった教室内のクラスメイトも、話を聞いたかもしれない。

知らない人たちからは、「あそこに、ちょっとヤバい子いるよ」って冷ややかに見られてたのかもしれない。

クラスメイトたちからは、「かっぱちゃん、そういうかんじの情緒不安定な子だったんだねー。かわいそうだねー、たいへんだねー」って思われたかもしれない。

 

どうしよう。

なんにもなかったことに、ならないのかな。

 

ウサちゃんとネコちゃんにも、迷惑かけてしまった。

二人ともすごくびっくりしただろうと思う。

友達だから、困ったときだから、迷惑だなんて思ってないよって、ふたりはきっとそう言う。逆の立場でも私はきっとそう思うけど、それでもやっぱり思っちゃう。

ごめん。

助けてくれてありがとう、でも、ごめん。

 

 

落ち着いてきた私を見ながら、ふたりは何事もなかったかのようにのんびりコーヒーをすすっていました。

そうするとやっぱり、罪悪感みたいな恥みたいな、変な感情が出てきそうになります。

 

それをごまかしたくて、説明会を始めることにしました。

家族への説明用だったけど、そのパワポを早送りするみたいにして、私の特性についてお医者さんが言っていたことを説明しました。

「すごく言い出しづらかったと思うけど、話してくれてありがとう」って言葉を選びながら優しく微笑んでくれるウサちゃんも、

ADHDとかASDとか一般的な知識はいいのよ。かっぱちゃんの場合を教えてよ」っていつもどおりクールにパッキリ言ってくれるネコちゃん(私みたいに人の顔色を見るのが苦手な人間は、素直で毒舌な友達がすごく気楽なのです)も、とってもとってもだいすきです。素敵な友達です。

「薬、今日は自分で飲めてたけど、念のためいつもバッグの中で入れとくとこ教えて。何なら、そこにキーホルダーか何かつけといて」というネコちゃんのアドバイス

こうして、「いつでもどこでもパニックになりそうなときに備えるセット」を作っておくことにしました。 

 

 

信頼できる友達に話して、

理解してもらえてよかったなあ、これから気持ちがちょっと楽になるかもしれないなあ

っていう気持ち。

 

それと

それでも、やっぱり、やっぱり、

みつかりたくなかったな

っていう気持ち。